作業療法士とは
About Occupational Therapist
作業療法士のお仕事
About Occupational Therapist Job
作業療法士のお仕事とは
理学療法士と並びリハビリテーションの一翼を担う国家資格。対象となるのは、生まれつき障害のある人や病気や事故で障害を負った人、高齢のために身体や精神の機能が衰えた人、認知症の人など広範囲にわたる。理学療法士が基本的な機能を回復させるのに対し、作業療法士は日常生活ができる応用力をつけるためのサポートを行う。
求められる力
Required power
楽しさを生み出す発想力に好奇心も大切な要素
作業療法の範囲は、日常生活や労働はもちろん、趣味や遊び、学習、創作活動など多岐にわたる。そのため、自身もチャレンジ精神にあふれていることが大切。また、対象者の意欲を引き出すための創意工夫も求められる。
仕事内容
Job Description
基本的動作・能力の改善
運動や感覚・知覚、心肺や精神・認知などの心身機能の向上を目指す。筋力を増強させて日常生活に必要な運動能力を高めたり、レクリエーションを通じて感情表現を豊かにしたりする。
応用的動作・能力の改善
食事やトイレ、家事など、日常で必要となる身辺動作や家事動作などの訓練を行う。なかには手芸や木工、将棋、園芸など、趣味として行われるような動作も取り入れ、より豊かな生活が送れるようサポートする。
社会的適応・能力の改善
地域活動への参加、就労・就学で不便が出ないよう訓練を行う。職業訓練や通勤時の交通機関の利用についてなど、具体的な生活に沿った内容の訓練や指導を行う。
福祉用具指導・住環境の整備
日常生活を円滑に行うために車椅子や歩行器といった福祉用具を使用する場合、選び方や使い方についての指導をする。また、バリアフリーが施されていない家では、可能な範囲でのリフォームも含めてスムーズに生活できる環境づくりをサポートする。
TOPIC
病院・施設はもとより、在宅での求人も増加! その人らしい暮らしを回復させる作業療法士のお仕事
理学療法士が身体の機能を回復させることに対し、作業療法士は日常生活や社会生活への適応を回復させるのが仕事。そのため、理学療法士では行わない躁うつ病や摂食障害といった精神障害の患者のほか、染色体異常や多動性障害などの発達障害を持った子どものためのサポートも行う。医療モデルと生活モデルの両方からリハビリテーションを行い、一人ひとりの大切な人生や生きる力に寄り添うことが大切。今後、本格的な高齢社会に突入することから、医療現場のみならず、在宅看護・介護など地域社会での活躍が期待される。患者の生活環境の改善や生き生きと暮らすためのサポートを行うため、住宅・福祉用具・補装具・自助具などへの専門的な知識も必要。
資格取得のルート
Qualification route
作業療法士国家試験の合格状況(全国平均)
活躍の場
Place of activity
活躍の場が拡大しているため、より専門性が求められる
リハビリの専門家として活躍の場が広がってきている。とくに、近年では高齢化による「地域医療」や精神ケアの分野での需要が高まってきている。そのため、作業療法士として最低限必要な基礎知識に加え、それぞれの活躍の場で求められる専門的な知識や技術の習得が必要となる。
資格取得後のキャリアプラン
Career plan after qualification
認定作業療法士
日本作業療法士協会が認定する資格で、臨床実践能力・教育能力・研究能力・管理運営能力において水準以上であると認められた作業療法士が取得できる。自身のスキルアップとして取得するケースがほとんど。5年ごとの「臨床実践の報告」「後輩の育成指導」などの条件を満たさなければならないため、日々の研鑽が必要になってくる。
3例の事例報告提出
認定作業療法士取得のための共通研修(3講座)と選択研修(2講座)の受講修了
研修修了時の筆記試験に合格
専門作業療法士
日本作業療法士協会が認定する資格で、臨床実践能力・教育能力・研究能力・管理運営能力において水準以上であると認められた作業療法士が取得できる。自身のスキルアップとして取得するケースがほとんど。5年ごとの「臨床実践の報告」「後輩の育成指導」などの条件を満たさなければならないため、日々の研鑽が必要になってくる。
- 認知症
- 福祉用具
- 高次脳機能障害
- 特別支援教育
- 手の外科
- 精神科急性期
- 摂食嚥下
研修実践、臨床実践、研究実践、教育と社会貢献の4実践を修了すること
介護支援専門員
ケアマネージャーともいい、福祉事務所や居宅介護事業所、高齢者福祉施設などで介護のケアプランを作成する。独立開業も可能。受験資格は、保健・医療・福祉の分野で5年以上の実務経験かホームヘルパー2級以上を持ち、通算5年以上の実務経験または介護に10年以上従事した者。
福祉用具プランナー
公益財団法人テクノエイド協会が認定する資格。福祉用具を必要とする高齢者や障がい者に対し、必要な福祉用具の選択の援助、適切な使用計画の策定、利用の支援及び適用状況のモニター・評価までを行うことができる。仕事の内容は、福祉用具に関する一般的な相談やプランの作成、利用支援、福祉用具適用後の再評価など。多様な福祉用具を扱ったり、対象者への提案や機器の調整を行ったりする機会が多い病院や訪問リハビリテーションなどに勤務する場合は、この資格の取得が勧められる。
Voice
Voice
リハビリ後の患者さんの生活をイメージし、
創意工夫と応用・発展ができる能力が必要
精神疾患の患者のリハビリでも活躍
作業療法士の基本的な仕事は、ケガや病気によって日常の生活活動が難しくなった方々のリハビリです。理学療法士が基本的な動作、起き上がったり、座ったり、歩いたりといった機能を回復するためにサポートを行うのに対して、作業療法士は字を書いたり、食事をしたり、勉強をしたり、仕事をしたり、余暇活動を行ったりと、その人にとって必要な生活活動を営むことができるように支援するのです。
ほかには、理学療法士が携わらない精神科領域のリハビリがあります。統合失調症やうつ病、発達障害の子どもや認知症の方などのリハビリに欠かせない存在です。
こうした精神心理的な側面である「こころ」に関する病気や障害などでも、日常の基本動作は困難になります。うつ病の人は朝、起き上がることができなかったり、食事も取れなくなったりします。自閉症の子どもなどは、自分の要求を言葉で表せないためにいら立つことがあります。そんな彼らが穏やかな生活を送れるように寄り添いながら支援していきます。
たとえば自閉症の子どもは、「水を飲みたい」と思っても、うまく言葉で表現できないため「わーっ」と声をあげて騒いだり混乱したりします。すると、そのやり方は違うと分からせながら、「水を飲みたい」という要求を伝える方法を学ばせるのです。
方法の一つとして、生活のいろいろなシーンが描かれている絵カードを用意し、「水を飲みたい」と思ったら、その絵カードを示すというものがあります。母親などと一緒に地道に少しずつ、考えていることと絵カードを結びつけて指導していきます。
うつ病の方なら、いろいろ話しながら何に対して不安を抱いているのかを自分で整理してもらいます。何らかの不安によって気き鬱うつが生じているはずなので、それを掘り起こす作業です。職場に問題があるのか、さらに職場の何が原因か。人間関係か仕事の内容か。そうやって本人のストレスを整理していくと何らかの傾向が見えてきますので、今度はそれに合わせた作業活動に向かってもらう。これが作業療法です。
こちらの示した作業ができるようになることが目的ではなく、あくまで本人が望む生活を送れるようになることが目的です。歴史的に見ても、もともと精神的な疾患を持った方たちに対するリハビリから作業療法士は生まれたようです。
福祉用具の評価・選定・指導も作業療法士にとっては重要な役割
患者さんが使う福祉用具の評価・選定や指導なども作業療法士の大切な役割です。たとえば、脳卒中の後遺症で右半身が麻痺してしまい、利き腕が思うように動かなくなった患者さんがいるとします。入院中に理学療法士や作業療法士によるリハビリが行われ、ほとんど動かなかった右手が少しずつ動くようになり、立ち上がって歩けるまでに回復しました。すると、やがて患者さんは家に戻り、今度は自宅でリハビリを続けることになります。
家族だけでお世話ができないようなら介護ヘルパーを頼むことになるでしょう。また、リハビリを始めるに当たって、家の中をバリアフリーに改築する方もいらっしゃいます。部屋と部屋との段差をなくしたり、部屋や廊下に手すりを付けたり、それまでは畳の上に布団を敷いて寝ていたのをベッドに変えたり。
作業療法士はそうしたバリアフリー化などにも提案を行います。不自由な手でも使える箸やスプーン、家の中や外をスムーズに動ける杖や歩行器など、どのような補助具があるのかといった提示や、使用方法、介助方法などの支援も行います。
今では、とにかく多種多様な補助具が作られていますから、患者さんの状態を見て最も使い勝手のいいものを勧めるというのも作業療法士の大きな仕事です。
介護保険導入後、高齢者も含めた在宅支援が増加し、作業療法士の役割もまた格段に増えてきました。病院や老人福祉施設だけでなく、自宅での生活に密着したリハビリが重要です。残念ながら作業療法士はまだまだ不足しているのが現状なのです。
作業療法士に必要な能力
私は作業療法士として30年以上にわたり、総合病院や市民病院、急性期医療から在宅医療、子どもから高齢者に至るまで、いろいろな臨床現場を経験してきました。今では、そうした経験が大切な財産になっています。
私は初めから作業療法士を目指していたわけではありません。高校の頃は作業療法士がどのようなものか、ほとんど知りませんでした。当時から障害児や障害者をサポートする仕事に就きたいと漠然と考えてはいましたが、どのような仕事があるのか見当もつかず、養護教諭や医師、看護師ぐらいしか思いついていませんでした。
そんな時に高校の先生から「こんな仕事があるよ」と教えられたのが、作業療法士だったのです。そう言われても、仕事の中身はイメージできませんでしたから、本を読んだり話を聞いたりするうちに、どうやら作業活動を通して患者さんを楽しくサポートしていく仕事だなと。「楽しいならいいかな」という、とても単純な選び方でした。
私の頃は作業療法士の養成校が少なくて、厚生省(現在の厚生労働省)の管轄による専門学校が全国に数校だけでした。教科書も完備されていなくて、海外の原書をそのまま教材として使っていたのを覚えています。
理学療法士のほうは、すでにいろいろな現場で活躍していて学校もたくさんありました。そのため「リハビリ=理学療法士」というイメージが強くなったようです。
その後、私は専門学校を卒業して就職先を探しました。当時も募集はたくさんあったのですが、現場に先輩が少なくて。病院のリハビリテーション科でも、理学療法士は何人かいるのに作業療法士は私が第一号という例が結構ありました。そうなると、仕事のやり方も自分で開拓しなければいけなくて、海外の本などを読んで参考にしながら……という時代でした。
ですから作業療法士向きの性格を強いて挙げるなら「人が好き」ということでしょうか。これはほかの医療職も同様だと思いますが、人間が好きで、その人のために何かしてあげたいというようなタイプです。
とくに、将来的にはチーム医療の一員として看護師、理学療法士などと連携しながら仕事を進めていく現場が増えると思うので、対患者さんだけではない、チームのコミュニケーション能力が必要になるでしょう。メンバーとの関わり方がスムーズにいかないと、患者さんにも悪影響を及ぼしてしまいます。
もう一つ必要な性格を加えるとしたら「いろいろなことに興味を持てる」人でしょうか。これは結構大事で、患者さんはそれぞれに個性がありますから、趣味嗜好もいろいろです。学校で習った作業療法のマニュアルにだけ従えばいいというわけにはいきません。というより、ほとんどマニュアルはマニュアルでしかないと思ったほうがいいでしょう。それを、個々にアレンジしていく必要があります。
生活の中の動作だけでなく、音楽や裁縫、美術など、ほとんど何でも取り入れることが可能です。音楽療法にしても園芸療法にしても、その分野の専門家はいますが、作業療法士もまたそうした知識を得ておかねばならないのです。
それに、いろいろな療法をアレンジしていく楽しさもあります。これが作業療法士の仕事の面白さでもあるので、そこに興味を持てなければ、あまりこの仕事には向いていないといえるかもしれません。
誰でも仕事をしていくうちに、経験が専門性を生み、何となく自分なりの「作業療法士像」が作られていくものです。
緩和ケア、終末期におけるリハビリとは
緩和ケア、終末期医療の臨床現場では、いろいろと考えさせられました。作業療法士としてのやりがいを最も強く感じたのもこの現場です。
がんの末期患者さんなどでは、延命治療を望まず、痛みや苦痛を和らげて自分らしい最期を迎えようとする方が多くいます。あるいは難病の患者さんでは、病気の進行によって徐々に筋肉が萎縮し、やがて眼球しか動かせなくなる人もいます。そんな方とは、様々なツールを使ってコミュニケーションを取らねばなりません。
こうした現場で、どのような生活リハビリが患者さんのためになるのか。作業療法士としてのゴールは、その人が病気やケガになる前に送っていた生活を取り戻すことを想定しています。もちろん、まったく同じ状態にならないことも多いのですが、そうした中でも可能な限り、患者さんが希望する暮らしを目指しているわけです。
ところが、がんの末期や難病の患者さんは、そうした目標とは異なってきます。食事をする、排泄をする、入浴をする、服を着る……そうした日常生活の行動が、いくら訓練してもできなくなっていきます。病気の進行を止めることは困難だからです。
では、リハビリはしなくていいのか―――。私は、そうは思いません。
以前のような日常生活は取り戻せないにしろ、それに代わるような目標、やり方を作業療法士は考えなければいけない。いろいろと工夫して提案したり試したり、環境を整えたり、できることはすべて行います。
その結果、最後には笑顔を浮かべ、今、生きている瞬間を喜んでくださるのを見ると、むしろ私のほうが学ばせていただいていると思えてくるのです。
みなさんが自分の病気を受け入れて、大変な時期を乗り越えようとしている。生命倫理についても、たくさんのことを深く学びました。そんな時こそ、作業療法士としてのやりがいを感じる瞬間でした
森ノ宮医療大学 小林貴代 教授 現場勤務歴 38年
作業療法士をめざしたい方へ
本校に作業療法士の学科はありませんが、森ノ宮医療大学では、作業療法学科の体験授業を開催しております。年齢、性別、職業を問わず、どなたでもご参加いただけますので、是非お気軽にお越しください。